今では地震直後に発表されることが当たり前になった「津波警報」ですが、昔は発表までに数十分かかっていたころもありました。津波警報の進化の歴史です。
1952年:津波警報開始
1952年4月1日、日本で津波警報の運用が始まりました。これは当時日本を占領していたアメリカからの要請にによって設置されたものでした。当時の津波警報は今とは大きく違い、発表方法も一般人にはわかりにくいものでした。
地域区分
1区(北海道のオホーツク海沿岸)
2区(北海道の太平洋沿岸)
3区(北海道の日本海沿岸)
6区(新潟県から能登半島の輪島までの沿岸)
7区(茨城県から千葉県野島崎までの沿岸)
8区(東京湾から静岡県までの沿岸と伊豆諸島の沿岸)
9区(愛知県と三重県の沿岸)
10区(能登半島の輪島の西から福井県までの沿岸)
11区(和歌山県と大阪湾の沿岸)
12区(岡山県と広島県の沿岸)
13区(山口県を除く中国地方の日本海沿岸)
14区(四国の瀬戸内海沿岸)
15区(四国の太平洋沿岸)
16区(九州の東海岸と薩南諸島および山口県の瀬戸内海沿岸)
17区(九州の西海岸と山口県の日本海沿岸)
18区(沖縄県の沿岸)
発表情報
発表されていた情報はそれぞれの予報区に対して、「ツナミナシ」「ツナミオソレ」「ヨワイツナミ」「オオツナミ」「ツナミカイジョ」の5つでした。「ヨワイツナミ」は概ね2m程度、「オオツナミ」は3m以上の津波が予想される沿岸に発表されていました。しかし、当時は津波のシミュレーションに数十分もの時間を要していたため、震源が近い地震では役に立ちませんでした。
1977年:津波警報改善-1
1977年、予報区域の変更はなく、発表する情報の名称が変更されました。具体的には「オオツナミの津波警報」「ツナミの津波警報」「ツナミエチュウイ(津波注意報」「ツナミケイホウカイジョ」「ツナミチュウイカイジョ」「ツナミナシ」となりました。このころになると津波警報の発表は迅速になり早ければ5分程度で発表できるようになりました。しかし1993年の北海道南西沖地震では津波がわずか3分で到達し、津波警報が間に合わなかったことから見直しを迫られます。
1999年:津波警報改善-2
北海道南西沖地震で津波警報が間に合わなかった反省から気象庁は津波警報の大幅な見直しを行いました。これまでは地震発生後に津波のシミュレーションを行っていましたが、事前に10万通りのシミュレーションを行い、その中から最も近いものを使用して津波警報を出すことで発表にかかる時間が3分に短縮されました。また予報区域も18から66に細分化されました。
発表区域
出典:気象庁
発表情報
津波注意報:予想高さ50cm
津波警報(大津波):予想高さ3m・4m・6m・8m・10m・10m以上
2013年:津波警報改善-3
2011年に発生した東日本大震災では地震発生後に大津波警報が発表されましたが、その内容は「宮城6m」「岩手・福島3m」という内容で、実際に襲ってきた10m以上の津波を正確に予測することはできませんでした。これは気象庁が津波警報の発表に使用している情報が地震発生から1分半の間に収集できたものに限っていることが原因で、マグニチュード8を超えるような巨大地震の場合、断層破壊が終わる前までの情報を使って津波警報を発表していたため必然的に過小評価になってしまっていたのです。そこで気象庁はマグニチュード8を超えるような巨大地震が発生した際には具体的な数値を示さず大津波警報の予想高さを「巨大」、津波警報の予想高さを「高い」と表現するように変更しました。また10m超、巨大な津波が予想されるときは「東日本大震災クラスの津波が来る」と表現し最大級の警戒を呼びかけます。
発表情報
マグニチュード8未満
津波注意報:予想高さ1m
津波警報:予想高さ3m
大津波警報:予想高さ5m・10m・10超
マグニチュード8以上
津波注意報:表記なし
津波警報:高い
大津波警報:巨大
まとめ
津波警報は常に改善され続けていますが、必ず当たるという保証はありません。また震源が陸に近いと間に合わないこともあります。もし「巨大」「高い」という表現が使われたら非常事態です。東日本大震災と同じような甚大な被害が発生する可能性があります。