「救助トリアージ」とは何でしょうか?何も知らずに「最悪、家の下敷きになっても助けが来るからいいや」などと考えている人は命を落としてしまうかもしれません。「救助トリアージ」をする理由と実際にどんなことが行われるかを解説します。
トリアージとは?
トリアージと聞いて一番最初に思い浮かぶのがこの札という方も多いのではないでしょうか?トリアージとは患者の症状の度合いによって、処置の優先順位をつけることを言います。
それぞれの色が示している意味は
「黒」死亡、もしくは救命不能
「赤」最優先で搬送・治療
「黄」念のため搬送
「緑」搬送の必要なし
です。
なぜ優先順位をつける必要があるのか?
それは怪我人の数に比べて、対応する医者の数が圧倒的に足りないからです。そのため、緊急を要さない患者や、すでに手の施しようのない患者を後回しにして、助かる見込みのある人に最優先で処置を行うしかないのです。
阪神淡路大震災の教訓
トリアージはこれまで、救助した人たちを対象に行っていました。しかし、大地震が発生するなど、そもそも救助すらままならない状態になることもあります。1995年1月17日に神戸一帯を襲った阪神淡路大震災では消防の人手不足が深刻な問題となりました。
特に神戸市東灘区では2万棟近くの建物が倒壊しましたが、その対応に当たることができた消防士はわずか113人でした。 中には1人を救助するために数時間を費やしながら救助した人が亡くなるという事例もありました。
一方、呼びかけに反応がない現場での救助をあきらめ、効率よく救助を進めた部隊もありました。
“人”が救助に当たる以上、どちらが正しいかを簡単に判断することはできません。自分が当事者であれば、助かる見込みがほとんどなくても、目の前に人がいると分かっていれば、救助を続けると思います。
救助をもっと効率よく行っていれば、もっと多くの人を助けられたのではないか?
救助トリアージ
この阪神淡路大震災を教訓に生まれたのが「救助トリアージ」です。 助かる見込みのない人を後回しにして、助かる命を1つでも多く救う。
神戸の消防を追うように、全国の消防でも導入が進んでいます。実際に2018年6月18日に大阪北部地震でも救急の要請を断られるケースが相次ぎました。
実際にどう判断するのか?
では、実際に災害が起きたとき「救助トリアージ」はどのように行われるのでしょうか?
実はまだ、明確な基準を示している消防は存在しません。災害は1件1件、被害の内容が大きく異なるため、基準を設けることが難しいのです。
では、どう判断するのか?
実際に災害が起きたとき、現場の消防士が自分で判断をします。誰を一番最初に助けるのか?誰の救助をあきらめるのか?その最終判断はすべて現場で救助に当たっている消防士が判断することになっています。今、全国の消防では、この現場での判断の精度を上げる訓練を続けていますが、もしも自分が、救助を断られる側になったら到底納得できないでしょう。
家族がまだ家の中に取り残されている。
返事はないけど、意識を失っているだけかもしれない。
今助ければ、まだ間に合うかもしれない。
しかし、災害時にはあなた以外も、救助を必要としています。現在のシステムでは、1人でも多くの人を救うためには、生きている可能性が低い人を見捨てるしかないのです。
まとめ
救助トリアージによって、悲しい思いをしないためにできることは一つ。事前に災害に備えることです。家の耐震補強をしておくだけで、救助トリアージに振り回され、つらい思いをすることもなくなります。あなたは、自分の命、家族の命を守れますか?